2023/5/6〜2023/5/8

 ひとりで北海道に旅行にいった。

 

 ひとり、かつ公共交通機関で巡れる程度の旅行だった。リラックスと自分の経験に焦点を当てた今回の旅程を思い返すと、昨年のジェットコースターのような情緒との別れを感じた。

 

 昨年は熱狂の1年だった。精神の摩耗と多額の金銭と引き換えに脳の快楽物質を司るところを殴り、特定の人物に陶酔する(いわゆる「オタ活」)というのは私の性分にマッチしており、常軌を逸した高揚を得られたが疲弊していたのも事実だ。唯一無二の経験と思い出がたくさんあるので、後悔は一切していない。

 

 去年の10月から続いていた長い長い燃え尽き症候群がようやく終わった。日光の当たるフローリングに裸足で触れたり、誰かと顔を突き合わせて新譜の話をしたり、みたいな喜びをようやく思い出せた。

 

 

 徹夜明け、眠らないよう踏ん張って音楽を聴いている東葉高速鉄道の中でやや様子のおかしいおじさんに「すみません!すみません!すみませーん!」と話しかけられ、なかなかな滑り出しではあった。

 

 恐怖で固まる体とは逆に、脳内では「今すぐ動くべき?キモイ近いでも刃物とか出てきたら終わりだしてか誰か助けてよ」とビュンビュン考えが巡る。刺激しないよう無視しつつAirPodsの音量を最大の8割ほどまで上げた。しかしそれも貫通してくるほどの大声だった。朝7:00にしては声が出過ぎ。

 

 飛行機にひとりで乗ったことがなく、わかんね〜と思っていたものの乗れば案外なんてことなかった。保安検査も難しくない。私はもう大人で、別にひとりでどこにでも行けるんだなと実感した。

 

 

 今回の旅行では「パフェをたくさん食べる」ということを目標にしていた。最終結果は5個。このために海鮮、ラーメン、ジンギスカン、ザンギなど北海道のグルメチャンスはほぼすべてかなぐり捨てた。

 

 パフェには絶対ブラックコーヒーと決めているので、カフェインの食欲減退効果も相まって、食事といえば初日に持ち帰ったお寿司と、宿の朝食バイキングのみだった。

 

 MVPはぶっちぎりで佐藤堂の「塩キャラメルとピスタチオ」。

 

・塩キャラメルのアイス

・ピスタチオのアイス

・ベリームース

・ソフトクリーム

・りんごジュレ

 

の構成で、すべてが独立した味にもかかわらずここまですべてが噛み合ってるパフェを初めて食べた。パフェはこれからもずっと食べたいけど、なんとなく自分の中で「けっこういいとこのやつで、1500円は出したほうがいいな」というラインが引けた。

 

 

 一昨年訪れた小樽運河とそのほとりにある宿のことが忘れられなかったので、そこに泊まった。

 

 温泉がなにより素晴らしくて、でも温泉のよさって文字化できるものでもないし特にしたいとも思わない。でも何も書かないのも違うよね。サウナじゃなくて蒸し風呂なのが珍しい。薄暗い小屋で存分に息を吸って吐いて温泉の湯気を体内に詰め込んで、北海道の冷ための外気にあたるのがたまらなく気持ちよかった。

 

 サウナブームへの逆張りで「整う」を否定する言葉がたまに目に入るので、これからは「あー!ヒートショック気持ちいいー!」と心の中で叫ぶことにする。

 

 

 常に頭の中で何かを喋っている弊害なのか、若干過眠の気がある。ひとりで旅行するのはそこも噛み合っていた。今回も宿に到着して速攻持ち帰ったお寿司を食べ、そのまま横になることができた。あと、好きな音楽を好きなときに大きめの音量で流せるのが何よりよかった。自分のマインドセットさえしていれば、いつでも上機嫌でいることができる。

 

 並行して、友だちといく旅行にはかけがえのない楽しさがあるし、人生でできるうちに何回でもやっておいた方がいいなとも強く思った。少し詰め込み気味でも、最後に行ったカラオケで寝ちゃっても、それでも楽しいのはやっぱり友だちだからだ。

 

 今回も結局、初日の朦朧とした頭での旅程組みを手伝ってくれたのは友だちだった。

 

 

 2日目の夜、かなり時間が余ったので小樽運河のナイトクルージングに乗船することにした。

 

 たしかに予想できた事態だったが、カップル6組+私での出航にはさすがに面食らった。ロマンチックなアクティビティなので当然と言えば当然だが、ここまでとは思わなかった。夜風もちょうどよく、しまっていた薄手のダウンとマフラー、もこもこのイヤーマフを身につけることができたので大満足だった。

 

 

 以下は旅行中に考えていたこと。

 

 自分が持てるものは有限である、ということに最近気づいた。遅いかもしれないけど。それは物質的にもそうなんだけど、人間関係もそうだなと思っている。だから、いま自分の近くにある人もモノもぜんぶ大切にしたい。私は大体の人のことがうっすら好きで、生きている営みとかその中の失敗をチャーミングだなと思っているので。

 

 自分は自分のままでいいのかもしれないと最近は思った。自分の変えられないところに思い悩むのは時間の無駄かもしれない、自分のままでいられる立ち回りと社会性のバランスをしっかりとりたい。

 

 

 次はもっと心細い旅行がしたい。去年の初めに急に思い立って夜行バスで京都に行き、健康ランドに行こうとしたら夜明け前のローカル駅を歩くことになった。夏に和歌山に行ったとき、栄えてなさゆえに忘れ物を現地で調達できなかった。

 

 そういうことがやりたい。免許取るまで待ちきれないので原付の免許とることにします。